そばにある音のように
絵の制作をする時は、いろいろなジャンルの音楽を流します。
題材の雰囲気に合わせてみたり、その日の気分や天気などで、邦楽・洋楽・ジャンル問わず流します。
綺麗な音色のピアノが流れている時もあれば、心地いいギターソング。
すごくセンチメンタルな曲を選んで聴いている時もあれば、ポエトリーやゴリゴリなHIPHOPを流す時もある一方、ジブリやディズニーのオルゴール、川や鳥の囀りなど自然の音を流すだけの時も。
昔からジャンル問わず、音楽がいつも側にある生活だったように思いますが、特に歳を重ねるにつれて、色々な曲を探しながら、出会っていくのが好きになっているように思います。
小学低学年の時、初めて買ったCDは、「味いちもんめ」というドラマが大好きで、その主題歌になっていた大黒摩季さんの「ら・ら・ら」が入ったアルバムCD。
(当時はら・ら・らだけが聴きたかったのに、シングル盤のいわゆる短冊版8㎝CDがあると知らずに、お年玉とおこずかいで高いアルバムを買ってしまったのは今となっては笑い話です。)
そして高学年になると、当時どこへ行っても流れていたMr.Childrenやスピッツが自然と好きになり、「Everything」や「CROSS ROAD」に「名もなき詩」、「君が思い出になる前に」や「空も飛べるはず」にグッときてたなぁなんて思い出します。
中学生になり、そんな音楽を聴いているうちに演奏にも憧れを抱いた1人で、アコースティックギターを手にしだしました。
そして同じ頃、不登校を経験をしました。
急に周りとの距離感や、人との関わり方に違和感を感じ、学校という空間に居場所を見つけられず、強い孤独を感じて学生生活から脱線しました。
そのときにそばに居て、励ましてくれたのは、やはり大好きな音楽だったように思います。
よくレンタルCDショップに通い、洋楽ではEric Clapton の「Tears in Heaven」や「Change the world 」に出会い、Mr.Bigの「To Be With You」やOasisの「Don't look back in anger」、Blurの「song2」などに痺れ、一方で、親世代のビートルズの赤盤青盤のカセットテープを聴いていたり、喜多郎さんや冨田勲さんといったシンセサイザー奏者の曲が身近にあったり。
また、いつからかフォークソングが好きになり、南こうせつさんやイルカさん、遠藤賢司さんや河島英五さんなどの名曲を耳にして、すごく心揺さぶられ。
本当に多様なジャンルの音楽を聴いて、とにかくワクワクしたり、しんみりしたりと、多感な年頃の中、いろいろと感受性を養わせてもらい、それぞれの音から支えてもらったように思います。(結局ギターはたいして上達はせず、自己満足でコードを時々鳴らす程度でしたが。)
そしてもう一つの思い出。
ちょうどその頃毎週、若手ミュージシャンがお題を決めて曲を制作するというテレビ番組がありました。
そこに出ていた若手アーティストでKAB.さんというシンガーソングライターの方がいました。
カラーに染められたモヒカンと、ピアスという強いインパクト。激しいロック調なのかなと思っていたら、制作される曲と詩は、強さの中に繊細さと柔らかさを感じたのを覚えています。そして彼は性同一性障害を公表しており、何よりその声から歌われる曲は優しさで溢れる音色でした。
当時、そんな時期を過ごしていた私は、その歌声と歌詞に、勇気をもらい、良く聴いていました。
それから随分と刻は過ぎて、音楽自体は側に在りながらも、昔聴いてきた曲とは疎遠になることも。
ある日、ふと思い出したその名前を検索してみたら、今もご活躍されているのを知りました。
久しぶりに聴くその曲は、決していい時期とは思わなかった当時を、懐かしい気持ちに変えてくれました。それと共に、甘酸っぱいような、気恥ずかしいような、また違った感情にも出会わせてくれました。
それぞれ違う経験に価値観や、生活環境に境遇を歩みながら、その中で交わり重なり、色々な人に届いていく音。
私は今、絵を制作していますが、何が目的なのだろうと思う時があります。
見て頂いた方に、何か心地よさや、側にそっと寄り添えるものを描けるのが大切なのか。
はたまた、自分の中に感じる渇きや湧き出る何かを追求し、表現していくのか。
きっと私には、どちらも必要なことで、現在の日々を過ごしていく糧になっているのだと、今は思っています。
tomo.
KAB.さんOfficial Youtube
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